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「英語よもやま話」2015年
ここには、読者の皆様との交流の場でもある巻頭序言を集めてあります。

●2015年1月【迎え酒】

お酒を飲み過ぎて二日酔いの時、気分を直すために飲む酒を「迎え酒」といいます。気分が良くなったように感じるのは、実は更なるアルコール摂取で、ボーっとしている脳の中枢神経を更に麻痺させている錯覚に過ぎないのですが、なぜか呑兵衛は「迎え酒」を良しとする傾向があります。

この「迎え酒」のことを、英語では"The hair of the dog that bit one"と奇妙な言い方をします。これはスコットランドでは、犬にかまれたらその犬の毛が傷を治すのによいという迷信があったことが、この言葉の起源になっています。つまり最初は「毒を以って毒を制す」の意味だったのですが、それが「酒を飲んで二日酔いになったらその酒を飲んで治す」という意味になったようです。

英語では次の様に解説されています。
In Scotland it was believed that applying a few hairs to a dog-bite from the dog which bit you would prevent 'evils' such a rabies. Therefore, they say drinking a glass of the same wine within 24 hours of drinking would excessively cure a hangover.
(スコットランドでは犬に噛まれた時は、狂犬病の予防には噛んだ犬の毛を傷口に塗布することが効き目があると信じられていた。それ故飲酒してから24時間以内に同じ酒を飲むと、二日酔い予防に効果があると言われるようになった。)

●2015年2月【暴露(No place to hide)】

 アメリカ国家安全保障局(NSA)及び中央情報局(CIA)元職員としてアメリカ政府による情報収集活動に関わったエドワード・ジョセフ・スノーデン(Edward Joseph Snowden)が、2013年6月に複数の新聞社の取材を受け、これらのメディアを通じてアメリカ政府が外国政府要人のスパイ活動のみならず、世界中の人々の個人情報を収集していたことを暴露し、世界中で大問題となったことは覚えていましたが、2014年に発売された「暴露」(グレン・グリーンワルド著・田口俊樹他訳:新潮社)を読み、米政府はグーグルやフェイスブックなどの記録やメールを無差別に盗み取ったり、携帯電話を遠隔で操って盗聴器として作動させ会話を傍受するなど具体的な手口を知り、「ここまでやるのか」と愕然としました。

 中でもNSAはパソコンのルーターやサーバーなどの機器が発売される直前に、メーカーに命じてマルウエアという監視ソフトを秘かに組み込ませ、新品として出荷させるということを行っていたそうです。"自由と国民の権利"を謳うアメリカが、国家自ら犯罪行為を行っていたことになります。スノーデンが持ち出したデータを分析した著者は、アメリカ政府は1ヶ月にメールを970億件、通話を1,240億件以上収集していることに気付きました。スノーデンは著者に「自分のデスクから一歩も離れなくても、Eメールアドレスさえわかれば、どんな人間でも監視対象とすることが出来る」と言っており、上記の通り政府権限でAT&T、ベリゾンなどの大手通信会社や、IBM、マイクロソフトなどのコンピュータソフト会社に個人アドレス提出を命じているのですから、それこそ「大統領のプライバシーから、他国首脳の動静、あなたの犯罪記録から、隣人の所得金額まで」そっくり知られているのです。

 スノーデンは米司法当局により逮捕命令が出されましたが、2013年8月にロシア政府か ら滞在が許可され、現在ロシアに亡命中です。

●2015年3月【手(Hand)を使った英語慣用句】

 英語には身体部分を使った慣用表現が沢山ありますが、Handは「手」の意味が拡がって、働き手、手助け、関与、トランプの札、時計の針などいくつもの意味に使われます。したがってhandを使った慣用句も多彩です。

 Give a big hand
Please give the singer a big hand!
この歌手に、大きな拍手をお贈り下さい!(=大きな手を与える)

 Have the upper hand
The guerrillas are reported to have the upper hand and the government forces are on the defensive.
ゲリラは優勢であると伝えられ、政府軍は防戦一方となっている。(=トランプで上位の札を持っている)

 High-handed
His boss is so high-handed that he dismissed him without giving him a chance to explain.
彼の上司は恐ろしく高飛車で、彼を首にする時、ひと言も説明する機会を彼に与えなかった。(=手を高く上げている)

 Wash one's hands of
I want to wash my hands of that seedy organization.
私はあの胡散臭い組織とは、今後一切関与したくない。(=手をきれいに洗う)

●2015年4月【キラキラネーム】

 最近は「キラキラネーム」と呼ばれる、信じられないような当て字の漢字名を我が子に付ける親が増えているようです。将来この子供達は親の気まぐれのために、学校で名前を呼ばれたり、社会に出て名刺を印刷する時に恥ずかしい思いをするのではないかと、人ごとながら気の毒になります。次の名前は何と読むと思いますか?
(1)空、(2)礼、(3)英雄、(4)七音、(5)強音、(6)光宙、(7)姫星、(8) 愛保、(9)亘利翔、(10)朱李埜

 【読み方】
(1)空(すかい)、(2)礼(ぺこ)、(3)英雄(ひいろう)、(4)七音(どれみ)、(5)強音(ふぉるて)、(6)光宙(ぴかちゅう)、(7)姫星(きてぃ)、(8) 愛保(ラブホ)、(9)亘利翔(ギリシャ)、(10)朱李埜(トリノ)

 因みに(9)、(10)は橋本聖子参議院議員の長男・次男名だそうです。【週間新潮2014年11月6日号】
いくら自分がオリンピックのことで頭が一杯とはいえ、こんな軽薄な名に普通では読めないような漢字を当てて、我が子の戸籍を登録する人が日本スケート連盟会長とは。。。(8)はその子が大きくなって、自分がどこで生命を授かったのかを理解したら、赤面した後に親を恨むと思いますけどネ。(6)、(7)だってその時流行ったアニメキャラというだけで、将来そのキャラを誰も振り向かなくなった時、鈴木ピカチュウ君とか、田中キティちゃんなんて呼ばれたら、本人が恥ずかしいことこの上ないと思います。昔、自分の子供に「悪魔(あくま)」と付けたバカ親がいて、さすがに市役所が受け付けなかったという事件がありましたけど、何とかに付ける薬はない、ってことでしょうか。

●2015年5月【サバを読む】

 数をごまかすことを「サバを読む」と言いますが、魚市場で鯖(サバ)は鮮度が落ちやすいので売るときに急いで数え、数をごまかしたことからというのが有力な説ですが、「さば」はともかく「読む」をうまく説明できないという理由から、別説があります。

 近世になって魚を扱う商人や魚市場を「いさば(五十場)」と言うようになり、「いさば」で働く人たちは魚は鮮度が大事だから、小魚を売るときに口早で数を数え、ポンポン箱に投げ入れました。これを「いさば読み」と称しました。「いさば読み」された魚は、後で数えるとたいてい数が足りない。そこで「さば読み」という言葉が生まれた、 とする説です。

 いずれにせよ魚に関係が有りそうです。面白いことに英語でfishyというと「うさん臭い、インチキの」という意味です。鮮度が直ぐに落ちて腐りやすい魚は、あまり信用出来ない時の譬えに使われやすいようです。

●2015年6月【快刀乱麻を断つ】

 Cut the Gordian knot:to act quickly and decisively in a difficult situation,to solve a problem boldly (困難な状況下で、断固たる態度で素早く判断し、大胆なやり方で問題を解決すること)

 古代フリギア(Phrgia=現在のトルコ西部)神殿に国王ゴルディオス(Gordius)が作った非常に複雑な結び目があり、「この結び目を解ける者はアジアを支配するだろう」という神託があったそうです。紀元前4世紀東方遠征途上のマケドニアのアレクサンダー大王(Alexander the Great)は、その結び目を解くことなく腰の剣で一刀のもとに切り捨て、その後大王はペルシアを滅ぼしインドまでその勢力下に治め、神託どおりアジアを支配することになりました。このことから、「Cut the Gordian Knot」は、「難題を一挙に解決する」という意味で使われるようになりました。日本語の慣用句「快刀乱麻を断つ」は、この古代ギリシャ神話の逸話翻訳が語源となっています。因みに「一石二鳥」の語源は、英語諺"To kill two birds with one stone."です。

●2015年7月【小説「坊ちゃん」の面白さ】

  四国の道後温泉に向かう道すがら、新幹線の中で『坊ちゃん』(夏目漱石著:新潮文庫)を読み返しました。江戸っ子坊ちゃんの儒教的な正邪曲直(=正義か邪悪か、人の道として曲がっているか、真っ直ぐであるか)は素直にウンウンと頷けるし、その痛快な啖呵はまるで落語を聞いているようで、中学生の頃、課題図書として読まされた時はこんなに面白いと感じなかったのですが、年を取って言葉の面白さが少しはわかるようになったからかな?と思いました。 坊ちゃんが教頭の赤シャツを酷評する時の啖呵と、落語『大工調べ』で大工の棟梁が因業な家主を『べらんめぇ』とまくし立てるところは、相通じるものがあります。

 ■坊ちゃん
 
あいつは、ハイカラ野郎の、ペテン師の、イカサマ師の、猫被りの、香具師(やし)の、モモンガーの、岡っ引きの、わんわん鳴けば犬も同然の奴だ。恐れ入って引き下がる「うでんがでん」(=愚か者)があるものか。俺を誰だと思うんだ。身長(なり)は小さくっても、喧嘩の本場で修業を積んだお兄いさんだ。

 ●落語『大工調べ』
 
大家さんとかなんとか云ってやりゃあ、つけあがりゃあがって、何をぬかしやがるんだ、この丸太ん棒め!てめえなんざあ、丸太ん棒に違えねえじゃあねえか。血も涙もねえ、のっぺらぼうな野郎だから丸太ん棒てんだ。てめえなんざ、人間の皮を着た畜生だ。呆助、ちんけいとう、株っかじり、芋っぽりめ!てめえっちに頭を下げるようなお兄いさんと、お兄いさんの出来がすこうしばかり違うんだ。

●2015年8月【初心忘るべからず】

  「初心忘るべからず」は、室町時代の能楽師世阿弥(1363-1443年)が残した言葉として有名ですが、一般には「志を立てた最初の気持ちを忘れるな」という意味で理解されています。しかしこの言葉が書かれた世阿弥の「花鏡(かきょう)」という書物をよく読むと、次の様に説明されています。

 当流に万能一得の一句あり。「初心不可忘」(初心忘るべからず)。此句三箇条の口伝在り。是非初心不可忘、時々初心不可忘、老後初心不可忘。

 この三箇条の口伝をわかりやすく言えば、「是非・時々・老後の三つの初心を忘れるな」ということで、「是非」とは、始めた時は初心者であるから未熟なことを自覚せよ、「時々」とは、修行中に、初めて体験すうることに緊張せよ、そして「老後」とは年を取っても初めてのことに取り組む意欲を持て、ということで、これが世阿弥が弟子達に伝えたかった本当の教えのようで、「花鏡」の最後は初心を忘るれば、初心子孫に伝はるべからず。初心を忘れずして初心を重大すべし、と結ばれています。

【参考文献】「世阿弥の言葉」(土屋 恵一郎:岩波現代文庫)

●2015年9 月【さか上がりを英語で言えますか?】

  「さか上がりを英語で言えますか?」(守誠著:サンリオ出版)を買って、「小学校で習った言葉」を英語で言おうとしたら、ウッ、と詰まってしまいました。読者の皆さんも小学校の日々に戻ったつもりで、7時限目の授業までそれぞれ科目の単語英訳に挑戦してみてください。

1時限目「国語」 (1)外来語   (2)敬語
2時限目「算数」 (3)平行四辺形 (4)台形
3時限目「理科」 (5)ピンセット (6)入道雲
4時限目「社会」 (7)盆地    (8)用水路
5時限目「体育」 (9)さか上がり (10)二人三脚
6時限目「音楽」 (11)四分音符   (12)木琴
7時限目「図工」 (13)彫刻刀    (14)ベニア板

【正解】
(1)loanword(2)honorific(3)parallelogram(4)trapezoid(5)tweezers(6)thunderhead
(7)basin(8)irrigation channel(9)backward flip(10)three-legged race(11)quarter note
(12)xylophone(13)chisel(14)plywood

●2015年10 月【ハワイ日系移民心の拠り所】

 ハワイオアフ島にある「日本文化センター展示館」を見学した時、故郷を離れ過酷な農園労働と貧しい暮らしに耐えながら、日系人移民は自分の子供達に日本人としの価値観をしっかり教えていったことがよくわかりました。展示館で販売されていた英文小冊子から、日系移民の心の支えになった二つの言葉と、その英訳をご紹介しましょう。

■仕方ない(Acceptance with resignation:諦めの気持ちで受け入れること)
 仕方ないとは自分ではどうしようもない運命・境遇を、甘んじて受け入れることである。日本人は自分ではどうやっても対処出来ない状況になった時は、たとえそれがどれほど不幸なことであっても、運命として受け入れるべきだと信じている。

 

■恥(Shame:不名誉な恥)
 恥とはshame(不名誉な恥)のことである。アメリカ人の文化は「罪の文化」であるが、日本人の文化は「恥の文化」である。日本人にとって不名誉な恥とは、家族全体にかかわる問題となるので、卑怯で許しがたい行動を慎ませる抑止力(deterrent)になっている。従って日本人の子供は一家の恥となるような行いを決してしてはいけない、と常に躾けられている。

●2015年11月【なるほど!英語慣用句語源】

 Skid row(ドヤ街)
The term "skid row" or "skid road" dates back to the 17th century in the U.S. when it referred to a log road, used to skid or drag logs through woods and bog. The term was in common usage in the mid-19th century and came to refer not just to corduroy roads themselves, but to logging camps and mills all along the Pacific Coast. When a logger was fired he was said "to be sent down the skid row." In the 20th century, "skid row" has referred to urban impoverished areas, inhabited by the poor, the homeless, prostitutes, drug dealers, criminals or others considered disreputable by society.

 スキッド・ロウ或いはスキッド・ロードの語源は、17世紀アメリカで木樵達が材木を運ぶために森や沼地の中に造った丸太道路である。19世紀になるとこの言葉は単に丸太道路という意味だけでなく、太平洋岸で製材産業に従事する木樵達のキャンプや、製材工場なども指すようになった。20世紀になり"スキッド・ロウ"は、都会で貧困生活者、ホームレス、売春婦、麻薬販売人、犯罪人など社会にとって好ましくない人々が住む地域のことを意味するようになった。

 Son of a Gun (ろくでなし)
In the age of discovery (15-18centuries), wives of sailors, or mistresses and prostitutes, were frequently on board ship when in port or sailing in home waters and occasionally children would be born aboard ship. Common sailors slept on the gun deck and when on board, their women would sleep there too. If a child were born on board, it would likely be born on the gun deck. Such a child was referred to as a son of a gun.

 大航海時代(15-18世紀)、船員の妻や愛人、或いは売春婦は船が入港中あるいは内海を帆走中はしばしば乗船を許され、その結果、時には子供が船の上で生まれることが起こった。下級船員は通常砲甲板(gun deck)で眠ったので、当然のことながら連れ添う女性達も砲甲板で夜を共にした。船で生まれた子は甲板で産まれることになるので、Son of a Gun(大砲の息子)と呼ばれるようになった。

 こんな状況で生まれて来る子供ですから父親不詳の場合が多く、Son of a Gunといえば「ろくでなし」、「不肖の息子」、「厄介者」というイメージになりました。また間投詞として、「なんてこった」という使われ方もします。Carpentersのヒット曲Jambalayaの歌詞に、♪Son of a gun we'll have big fun on the bayou (なんてこった、沼地の上でどんちゃん騒ぎさ)というのがあります。

●2015年12月【江戸っ子のユーモア】

 川柳を読むと、堅苦しい論語や中国二千年の歴史も、おちょくりのネタにしてしまう江戸っ子のユーモアセンスには感心してしまいます。

 堯の世に 細工の閑な 錠と鍵
古代中国の堯(ぎょう)は理想の聖天子とされ、社会がよく治まり泥棒もいなかったといわれていることから。

 それ見たか とって大公 盆を出し
殷周時代呂尚(太公望)の妻は、釣りに没頭して仕事をしない夫に堪えられず離婚したが、夫が周の文王に召し抱えられたことを聞くと復縁を迫った。呂尚は盆(器)に水を入れてすべてこぼした後に、「もと通り水が戻るか?」と復縁に応じなかった。『覆水盆に返らず』の語源になっている故事を茶化して。

 詩の語のと いわせず始皇 皆(みんな)埋め
秦の始皇帝の焚書坑儒(=書物を焼いて儒者を生き埋めにした)で、「詩経」と「論語」の 「詩」と「語」を、「四の五の言わせない」に掛けています。

 六十にして 立つご隠居 たのもしい
「論語」の有名な「三十にして立ち、四十にして惑わず、五十にして天命を知り、六十にして耳順う」から、六十になってもまだ男性自身が役に立つご隠居は頼もしいと、下ネタで落としています。

 鶏は あさまつりごと 怠らず
唐の玄宗皇帝が政治を放ったらかしにして楊貴妃を溺愛したことを、白楽天が「長恨歌」で「これより君王朝政(まつりごと)せず」と詠んだことから、夜明けを告げることを怠ることがない鶏より、玄宗皇帝は劣っていると皮肉っています。まことにケッコーですな。(笑)

 参考文献:「江戸川柳で愉しむ中国の故事」 (若林力著:大修館書店)


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