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「英語よもやま話」2017年
ここには、読者の皆様との交流の場でもある巻頭序言を集めてあります。

●2017年1月【2050年の世界(エコノミスト誌予測)】

 高度成長前の1960年代に日本の経済大国化を予測し、バブルまっ盛りの1980年代に日本のバブル崩壊を予測した英国「エコノミスト」誌が、2012年時点で40年後の世界を予測した「2050年の世界」(英エコノミスト誌編集部著:東江一紀・峯村利哉訳:文藝春秋社)を読みました。人口、戦争、病気、宗教、言語、情報等20の部門について予測していますが、興味深い予測を幾つか記してみましょう。

 既に現実となっている事項もありますし、「エ?本当にそうなるのかなぁ」と期待半分・疑心半分という事項もあります。2050年の時点で私がまだ生きていれば、ぜひ検証してみたいのですが − ちょっと無理か。。(笑)

  1. 世界人口は現在70億人から2050年には90億人に達する。その半分はアフリカ人。
  2. 高齢化が進み、65歳超の人口は全体の16%に達する。
  3. ヒト細胞(ゲノム)解析により遺伝のしくみや癌の原因究明が進む。
  4. 日常の電化製品あらゆるものが、ネットワーキング機能を持つようになる。
  5. 地球温暖化で干魃が広がり、北極は夏には氷が溶けるようになる。
  6. 紛争の原因はイデオロギー対決から宗教、資源確保になり、地域間紛争で核兵器が使用されるだろう。
  7. 世界的に高齢化が進み、特に先進国は防衛費や教育費などの予算が圧迫される。
  8. 現在の先進国で世界経済7位の規模で残れるのはアメリカのみ。
  9. 世界経済の半分はアジア経済となるが、日本経済は世界の2%まで落ち込む。
  10. 貧富格差は各国間では以前ほどでなくなるが、国内では富裕層と貧困層との格差が拡大する。その最大の理由はグローバル市場においては知識階級に冨が偏在するようになるからである。

●2017年2月【ジョーゼフ・ヒコ】

 青山墓地にある「浄世夫彦 JOSEPH HEKO」と刻まれた墓碑を見て、それが 嘉永3年(1850年)、14歳の時に乗っていた漁船が遠州灘で暴風に遭遇しアメリカ商船に救われ、後にアメリカ領事館の通訳となった浜田彦蔵(1837-1897)の墓であることを知り、彼の数奇な人生に関心がありました。
彦蔵の英文による自伝や当時のアメリカの新聞など資料を丹念にあたって書かれた「アメリカ彦蔵」(吉村昭著:新潮文庫)を読み、彦蔵が漂着先のサンフランシスコで学校に入り英語を学び、さらにキリスト教の洗礼を受け、アメリカ国籍を取得したことを知りました。

 彦蔵は南北戦争当時リンカーン大統領と握手した唯一の日本人であることや、明治維新前に横浜で初めて日本語新聞を発刊したことで知られていますが、この小説を読んで「アメリカかぶれの日本人」として幕末攘夷志士達に命を狙われたり、乗っていたイギリス船が下関沖で長州藩の砲撃を受けたことを初めて知りました。
またアメリカ領事館を辞した後貿易会社を起こし、薩摩藩や佐賀藩の交渉代理人として、長崎のグラバー商会を通じて小銃その他外国品を輸入したりもしました。
故郷姫路の生家へ錦を飾るつもりで戻ったところ、既に自分を知っている人間は殆ど鬼籍に入り、また菩提寺の過去帳には彦蔵自身も「流船にて死」と戒名まで付けられていることに愕然とする場面には、読んでいて思わず息を呑んでしまいました。

 彦蔵に限らず江戸末期に海難事故に遭い、幸い命はとりとめたものの、ハワイ、フィリピン、アメリカ、中国大陸などに漂着し、江戸幕府の鎖国令のために帰国出来ず、望郷の想いを抱いたまま異国の地で亡くなった漂流民が多かったことにも驚かされました。
この小説の中だけでも数十人の漂流民が登場しますが、彦蔵は同じような運命に苦しめられている同胞の帰国に力を貸し、吉村氏はあとがきで「この小説は彦蔵を主人公としているが、江戸末期の漂流民を描いたものである」と記しています。

●2017年3月【英単語語源】

  普段何気なく使っている英単語の語源も調べてみると、興味深い由来があります。

(1)Slush Fund (不正資金)
政財界などで動く不正の裏金のことですが、もともとは航海船のコックが、調理時に鍋から掬い取った獣脂肪を売って得た裏金が語源だそうです。またオーストラリア英語の俗語で、slusherとは「台所手伝い人」を意味するそうです。
The term slush fund was originally a nautical term: The slush was the fat or grease that was skimmed from the top of the caldron when boiling salted meat. Sometimes a cook would sell some of this fat to tallow makers and the money was called his slush fund.
(Slush fundとは航海用語から来ている。Slushとは塩漬けの肉を茹でた時に大鍋の上に浮いてきて掬われる獣脂のことで、時にはコックがこれを獣脂蝋燭業者(tallow maker)に売って小遣いを稼いだことから、slush fundと呼ばれるようになった)

(2)Robot(ロボット)
この単語は1920年にチェコスロバキアの小説家カレル・チャペック(Karel Capek)が発表した戯曲「Rossum's Universal Robots」(ロッソムの万能ロボット)で、初めて用いられました。Robot の語源はチェコ語で"苦役、つまらない仕事"を意味する"robota"ですが、チャペックはRobot着想の根源には、ユダヤ教のゴーレム伝説があったと語っています。ゴーレム(語: golem)とは伝説に登場する自分で動く泥人形で、作った主人の命令だけを忠実に実行する召使いですが、命令を実行させるためには厳格な制約が数多くあり、それを守らないと狂暴化するとされていたそうです。人間が造りながら勝手に暴走するのがRobotなのです。

(3)OK (オッケー!)
「いいとも!」という意味で、世界中で使われるアメリカ英語ですが、その語源については"Olla Kalla" (ギリシャ語で"all good")、 "Och aye" (スコットランド語で"yes, indeed").など諸説がありますが、ドイツ語の"Alles korrekt"(All correct)が英語に入ってきてAll Correct →OKとなったという説が有力です。

(4)GOLF(ゴルフ)
英語語源辞典を調べると、GOLFとは"Gentlemen Only Ladies Forbidden"(男性のみ女性は禁止)の略語だと書いてありますが、どうも後付けの理由か、ひょっとするとジョークなのでは?と思えてきます。一説ではボールをクラブで打って飛ばして穴に入れる現在のゴルフ近い形態のゲームは、14世紀のオランダが発祥地でその当時使われていた羽毛を中に詰めた皮製のボールがkolvenと呼ばれており、それがスコットランドに入ってkolfとなり、現在のgolfとなったという方が、もっともらしく思えます。

●2017年4月【都々逸(どどいつ)】

 都々逸は江戸時代末期に都々逸坊扇歌(どどいつぼう・せんか)という、芸人が三味線を弾きながら寄席で唄ったといわれる「七七七五」調の端唄で、男女の機微を洒脱に捉えた艶笑ものが花柳界で大流行しました。「七・七・七・五」のリズムは日本語に合うので、民謡、歌謡曲でも広く使われています。例えば、「鰊来たかと 鴎に問えば わたしゃ立つ鳥 波に聞け」(ソーラン節)、「赤いリンゴに 唇寄せて 黙って見ている 青い空」(リンゴの唄)などの歌詞、またTVコマーシャルの「カステラ一番 電話は二番 三時のおやつは 文明堂」や、フーテンの寅さんの有名な口上「結構毛だらけ 猫灰だらけ ケツの周りは 糞だらけ」も、確かに「七・七・七・五」調です。

 「信州信濃の 新蕎麦よりも わたしゃお前の そばが良い」、「お前百まで わしゃ九十九まで 共に白髪の 生えるまで」などは良く知られた都々逸ですが、「都々逸読本」【注1】を読むと、やはり色っぽいものが秀逸で、「粋だねぇ」と感じます。もっとあけすけな閨房物を、ホームページでは公開出来ないのが一寸残念ですけど。。。(笑)

◇戀という字を くだいて読めば 糸し糸しと 言う心 (戀は「恋」の旧字)
◇猪口々々逢う夜を ひとつにまとめ 徳利(とっくり)話が してみたい
◇暑い暑い(熱い熱い)と 思っていても 三月もせぬうち 秋(飽き)が来る
◇惚れた数から 振られた数を 引けば女房が 残るだけ

【注1】「都々逸読本」(柳家紫文著:海竜社)

●2017年5月【必勝三法則】

  天皇陛下の心臓バイパス手術を執刀した順天堂医院院長の天野篤氏(右写真)は、毎週「週間新潮」にコラムを書いていますが、「私の必勝三法則」(2017年3月23日号)と題した文章は、外科医プロフェッショナルとしての矜持がうかがわれ、さすがだと思いました。コラムの一部をそのまま引用します。

 手術は勝負事ではありませんが、患者さんの命がかかっていますから、負けるわけにはいきません。外科医には「絶対に勝つ」という強い気持ちが不可欠なのです。ではその必勝法とは何か。私は三つの法則があると思っています。
第一は決め技、得意技を持つこと。私の場合は心臓を動かしたまま頸動脈バイパス手術を行う「オフポンプ手術」と正確な縫合がそれに当たります。(・・中略・・)

 第二はどのように戦うかというプレースタイルを持つこと。私なら「早い・うまい・安い」です。無駄を省いて手術時間を出来るだけ短く進めることで合併症が減り、入院期間も短縮され、医療費も安くあがるというわけです。(・・中略・・)

 そして第三が諦めないこと。トラブルが起こった時、冷静にリカバリーショットを打てるかどうかです。予期せぬ出来事に気が動転して手が震えたり、パニックを起こしたりして、リカバリーどころか、逆に事態を悪化させてしまう外科医もいます。

 「諦めない」という精神論だけではダメで、たとえていうなら幅10cmの平均台を地上から50メートルの高さに持っていっても、地上と同じ様に渡れる胆力と肉体と技術力を身につけるおくこと、これが出来て初めて諦めない心が起死回生のリカバリーショットへとつながります。

 この「地上50メートルの高さの平均台を、地上と同じで渡れる胆力が必要」というのは凄い喩えです。ここまでの高レベルの技術を持つという裏付けと自信がなければ、トラブルを乗り切れず、あたふたして失敗して諦めてしまうのです。「諦めない」ためには、日々の訓練・研究の積み重ねで、常に高いレベルを維持する必要があるということですね。

●2017年6月【 駒形どぜう】

 浅草にある泥鰌(どじょう)専門店「駒形どぜう」創業は、江戸時代の享和1年(1801年)。徳川11代将軍家斉の時代です。のれんの「どぜう」は元々の仮名遣い「どぢやう」四文字では縁起が悪いと、当時の有名な看板書きに頼んで奇数文字の「どぜう」と書いてもらったそうです。【注1】

 江戸の庶民の味を、二百年以上もそのまま伝えている店は珍しいと思います。まずはぬる燗の酒を飲みながら、今時少なくなった鯉のあらいでを酢味噌で食べます。メニューには「鯨の刺身」も載っているので、これも迷わず注文しました。名物の泥鰌鍋は、酒に漬けた丸のままの泥鰌を甘味噌仕立ての味噌汁で一度煮て、それを鍋に入れて濃い目の甘辛い割り下で煮込むのだそうです。【注2】

 笹掻きにしたゴボウを鍋に入れ、仲居さんに"たっぷり乗せてください"と言われた刻みネギも山盛りにし、食べる時は山椒か七味唐辛子をお好みで、少しかけると泥鰌の臭みを感じず、骨も柔らかく抵抗なく食べられます。

【注1】駒形どぜうホームページ:歴史 http://www.dozeu.com/history/
【注2】駒形どぜうホームページ:料理 http://www.dozeu.com/menu/

●2017年7月【サラリーマン川柳】

 第一生命が1987年に始めた「サラリーマン川柳」コンクールは今年30回目を迎え、これまでの投稿句数は108万句にもなったそうです。
会社での日々の出来事や、人間関係などをいかに簡潔に、ユーモアと風刺を効かせ五・七・五でまとめるかで「言葉の遊び」を楽しみます。使われている固有名詞や流行語に時代の流れを感じます。
なるほどなぁと私が選んだ川柳を幾つか並べてみましたが、自虐的なものが多いですね。(笑)

■世渡りの秘訣 ■ 自信 菓子折り コネ お世辞
(格言「地震・雷・火事・親父」)
■社内恋愛 ■ 連れ込むな 私は急には 泊まれない
(交通標語「気をつけよう車は急 には止まれない」)
■上司と部下 ■ "ちゃん"付けて 呼ばれた時は ヤな仕事
■ボーナス ■ ボーナスに 履かせてみたい 厚底を
■マンネリ夫婦 ■ プロポーズ あの日にかえって 断りたい
■夫の地位低下 ■ 「パパお風呂」 入れじゃなくて 掃除しろ
■酒乱 ■ 忘年会 図に乗り過ぎて 送別会
■健康 ■たまったなぁ お金じゃなくて 体脂肪
■高齢化社会 ■ 定年後 田舎に帰れば 青年部
■マイホーム ■ 一戸建て 手が出る土地は 熊も出る

●2017年8月【文科省「現役出向」の露骨さ】

 文科省の天下り斡旋について国家公務員制度担当大臣を勤めた河野太郎衆議院議員が、悪質な「現役出向」について詳しく数値を挙げてその実態を暴露しています。河野氏によれば2017年1月1日現在、241名もの現役文科省職員が、北海道から沖縄までの国立大学に計83校出向しているそうで、その数は驚くべきことに文科省職員の1割以上(!)にあたるそうです。【注1】これは「天下り」批判をかわすための巧妙なやり方で、これら出向した文科省職員のポストは、各大学の理事、副学長、事務局長といった大学運営の中枢を担う役職ばかり。文科省から「派遣」された職員が大学の主要ポストを牛耳っている国立大学は、もはや「文科省の植民地」となっているのです。

 2015年10月から2016年8月まで国家公務員制度担当大臣だった河野氏が、当時文科省の幹部達に「天下りはあるのか?斡旋は今でも行われているのか?」と問い質した時、彼 等は一様に「それは違法ですから、もう出来ません」と堂々と答えていたそうですが、「現役出向」制度を使うことで実質上の天下りをしていたのです。文科省は「各大学の学長からの要請があったため」という説明を貫いていますが、それは建前で、本音は「職員の再就職先を確保したい」(文科省)と、「文科省職員を受け入れることで、交付金(補助金)を取りやすくする」(大学)との思惑があるからです。下記の表【注1より一部抽出】を見ると、出向者数と補助金額とが、妙なバランスで保たれているような気がしてなりません。

 しかも露骨なのはこれら「現役出向」した職員の多くが文科省に復職した当日に文科省を退職し、その翌日に出向先であった大学に再就職していた − つまり一日だけ文科省に戻って退職金をもらって退職し、その翌日から今まで勤めていた大学の正式職員となり、その大学を辞める時はまた大学からその分の退職金を貰える −という「天下り」隠しの巧妙な手口だということです。「大臣であった私は明らかな嘘をつかれていた」と、河野氏は憤っています。

大学名 出向(人) 役職名 補助金(億円
北海道大学 6 事務局長、事課長、国際連携課長等 355
小樽商科大学 0   14
東京外国語大学 1 理事兼事務局長 30
東京大学 10 理事、企画調整役、研究推進部長、本部総務課長等 819
………… ………<中略>………
京都大学 6 理事、特命総長補佐、研究推進課長等 540
大阪大学 5 理事兼副学長、産学連携部長、学生支援課長等 439
広島大学 4 財務総務担当理事、キャリア支援リーダー等 250
鳥取大学 2 副学長、財務部長 108
九州大学 7 理事兼事務局長、法令審議室長、企画課長等 407
長崎大学 3 理事兼事務局長、国際教育リエゾン機構事務室長等 160

【注1】「文科省国立大現役出向241人リスト」(河野太郎;文藝春秋2017年4月号)


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