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「英語よもやま話」2019年
ここには、読者の皆様との交流の場でもある巻頭序言を集めてあります。

●2019年1月【五箇条の御誓文】

 五箇条の御誓文 慶応4年3月14日(旧暦)(=新暦1868年4月6日)に、明治天皇が天地神明に誓約する形式で公卿や諸侯などに示した明治政府の基本方針として夙(つと)に有名なのが、「五箇条の御誓文」です。明治神宮に外国人観光客のために和英対照で掲げてあったものを、紹介します。

 新しい時代への昂ぶる気持ちが誰にでもわかるような明瞭な表現で伝えられ、昨今の政党による安直かつ偽善的な「マニフェスト」と称するものとは、雲泥の差があることがわかります。それにしても英文から現代文に直訳した日本語を読み返すと、いかに明治時代の日本語が簡潔、かつ無駄なくまとまった表現(=英語のsuccinctという単語がピッタリ)であったのか、つくづく感心します。

 五箇条の御誓文 Charter Oath in Five Articles
1.広く会議を興し、万機公論に決すべし。 
Deliberative assemblies shall be widely established and all matters shall be decided by general discussion based on public sprit.【とことん話合う会議を全国津々浦々で行い、公の精神に基づき、誰でも意見を主張出来る会議の場で議論を尽くして、物事を決定すべきである。】

2.上下心を一にして、さかんに経綸を行うべし。 
All people, regardless of their respective status in society, shall unite their hearts and minds, and vigorously contribute to the development of the country. 【社会的地位の違いはあるとしても、全ての国民が勇気と知力を合わせて、国の発展のために力強く貢献すべきである。】

3.官武一途庶民に至るまで、おのおのその志を遂げ、人心をして倦まざらしめんことを要す。 
It shall be ensured that all people, officials, civilian or military as well as the general public, may accomplish their personal calling and not lose their spirit for life.【官僚であろうと、市民であろうと、軍人であろうと、一般庶民であろうと、全ての国民が自分で望むことを実現させ、自分の生活を失うことのないような国を造るべきである。】

4.旧来の陋習を破り、天地の公道に基づくべし。 
Out-dated and harmful practices shall be broken, and everything shall be based on universal principles.【時代遅れで有害な習慣は破棄し、全ての事は普遍の道理に基づいて対処されるべきである。】

5.智識を世界に求め、大いに皇基を振起すべし。 
The nation's core shall be vitalized b by gathering knowledge from all over the world, while cherishing our beautiful culture and tradition centering the Emperor.【世界中の知識を集める一方で、天皇を頂点とするわが国の美しい文化や伝統を尊重することが、わが国の有るべき姿である。】

●2019年2月【通話表(アルファベット音声表】

 Phonetic Alphabet(アルファベット音声表)とは、AをAlphaのA、 BをBravoのB、 CをCharlieのCというように、曖昧性を排除するためにアルファベットの文字を独特の呼び方で呼ぶ方法で、「通話表」と訳されています。以下に掲げたものは、NATO(北大西洋条約機構)が無線通信時に正確を期するために定めた通話表です。

A

Alpha

J

Juliet

S

Sierra

B

Bravo

K

Kilo

T

Tango

C

Charile

L

Lima

U

Uniform

D

Delta

M

Mike

V

Victory

E

Echo

N

November

W

Whiskey

F

Foxtrot

O

Oscar

X

X-ray

G

Golf

P

Papa

Y

Yankee

H

Hotel

Q

Quebec

Z

Zulu

I

India

R

Romeo

 

 

 日本の平仮名に使われる通話表は、電報を取り扱うNTTが次のように定めています。

朝日のア

いろはのイ

上野のウ

英語のエ

大阪のオ

為替のカ

切手のキ

クラブのク

景色のケ

子供のコ

桜のサ

新聞のシ

雀のス

世界のセ

算盤のソ

煙草のタ

千鳥のチ

鶴亀のツ

手紙のテ

東京のト

名古屋のナ

日本のニ

沼津のヌ

鼠のネ

野原のノ

葉書のハ

飛行機のヒ

富士山のフ

平和のヘ

保険のホ

マッチのマ

三笠のミ

無線のム

明治のメ

紅葉のモ

大和のヤ

 

 

弓矢のユ

 

 

吉野のヨ

ラジオのラ

林檎のリ

留守居のル

れんげのレ

ローマのロ

わらびのワ

お仕舞いのン

 

 

 

 

尾張のヲ

P as Papa, I as India, G as Golf.
Yes, PIG, it is.
大阪のオ、東京のト、算盤のソで、
お屠蘇です。

●2019年3月【大和心の雄々しさ】

 第198回国会冒頭の首相施政方針演説(2019年1月28日)で、安倍晋三総理大臣は平成を振り返ってこう述べました。「本年4月30日天皇陛下が御退位され、皇太子殿下が翌5月1日に御即位されます。国民こぞって寿ぐことができるよう、万全の準備を進めてまいります。『内平らかに外成る、地平らかに天成る』平成時代に、大きな自然災害が相次ぎましたが、被災地の現場には必ず天皇、皇后両陛下のお姿がありました。平成は、日本人の底力と、人々の絆がどれほどまでにパワーを持つか、そのことを示した時代でもありました。
『敷島の 大和心の雄々しさは ことある時ぞ 現れにける』(明治天皇御製) 明治・大正・昭和・平成。日本人は幾度となく大きな困難に直面した。しかしその度に大きな底力を発揮し、人々が助け合い、力を合わせることで乗り越えてきました。急速に進む少子高齢化、激動する国際情勢。今を生きる私達もまた、立ち向かわなければなりません。私達の子や孫の世代に、輝かしい日本を引き渡すため共に力を合わせなければなりません」

 この演説内容を読んで、私も「危機になると日本人は団結し、そしてその団結の象徴が天皇だった」という歴史的事実に改めて思い至りました。鎖国をしていた江戸時代末期に欧米列強が日本の植民地化を目論み、アメリカのペリーは軍艦の威嚇砲撃で無理矢理横浜に上陸して居座り、イギリスは薩摩・長州など西国強藩に肩入れし、フランスは逆に幕府に肩入れし内戦(戊辰戦争)となり国が分裂の危機に陥った時、明治天皇は「上下心を一にして、さかんに経綸を行うべし。智識を世界に求め、大いに皇基を振起すべし。」(五箇条の御誓文:1868年)と国の団結を訴えると、それまで対立していた薩長と江戸幕府はピタリと銃剣を納め、天皇の下で封建的農業国家であった日本を、近代資本主義国家に変革しました。

 また300万人の日本人が犠牲になった大東亜戦争末期(1945年8月14日深夜)、「一億総玉砕」と戦争継続にこだわる軍部に対して、昭和天皇は「このままではわが国は焦土となる。国民にこれ以上苦痛をなめさせることは忍びない。私自身はいかになろうとも国民の生命を助けたいと思う。日本が全く亡くなるより少しでも日本人が残ればまた復興が考えられる。自分が出来ることは何でもする」と最終決断をし、参列者は慟哭しつつ「 御聖断」に基づき翌8月15日正午に、天皇が日本の降伏をラジオで直接国民に語りかける「終戦詔勅」で丸四年に渡る全面戦争体制を止めさせました。 平成は人間による戦争ではなく、自然の脅威による国土経済の危機に、平成天皇は自らが被災地を訪れることで、日本人の団結の絆を深めた事実は、まさしく安倍首相が指摘した通りです。

●2019年4月【脳からみた認知症】

 厚労省によれば、平均寿命が男子81歳・女子87歳になった日本では、全国で460万人近い認知症患者がおり、2025年には700万人を超えると推計されています。やがて65歳以上の高齢者のうち5人に1人が認知症になる、という計算となります。「脳からみた認知症」(伊古田俊夫著:講談社ブルーバックス)を読むと、認知症は脳の病気で特効治療薬はないものの、最新の脳科学理論と医療機械による診断で、脳障害の場所による認知症状予測や、認知症発症後の進行を遅くする方法、機能回復に有効なリハビリなどが研究されているようです。

認知症(2004年までは痴呆症と呼称)は「いわゆる呆けでしょ?」で、老年性記憶障害などはある程度はやむを得ない現象と思われてきました。さすがに全国700万人となり収容施設が追いつかなくなると、姥捨て山状態で放っておくことが困難になってきました。認知症では次の五つの症状が、程度の差こそあれ観察出来ます。

【認知症障害】

  1. 記憶障害:物忘れがひどくなる。(保険証どこに置いたっけ? キャッシュカード暗証番号忘れた)
  2. 見当識障害:自分の置かれた状況がわからなくなる。(ゴミ捨てに出て、なぜ両手にゴミ袋持っているか理解出来ずに首をひねる。今日は何月何日だっけ?)
  3. 失語:言葉は分かっても意味がわからなくなる。(カンキセン? それって何だ?)
  4. 失認:感覚を通しての知覚区別が出来ない。(赤信号? 青信号? 右? 左?) 
  5. 失行:目的の動作ができなくなる(ネクタイが結べない、図形が模写出来ない)

【脳機能との関連】 

  1. 記憶を司る「海馬」(側頭葉)に問題があると記憶障害が起こる。また記憶を思い出すには記憶部分をコンピューターのワーキングメモリーに相当する脳回路で再生・伝達するのだが、この記憶部分が消える(空の書棚状態)、整理が出来ない(乱雑に押し込まれた書棚状態)になってしまうと、再生出来ない。
  2. 思考判断する前頭葉に問題があると、正しい判断が出来なくなる。
  3. 原語も同じく前頭葉に大いに関連あると見られている。特に長年の多量飲酒習慣者は、昨日までは何ともなかったのに、突然漢字が書けなくなったり意味がわからなくなることが多い。
  4. 視覚を司る後頭葉に問題があると、色の認識、形の差違区別が出来なくなる。
  5. 感覚情報を司る頭頂葉に問題があると、今迄出来た動作がある日出来なくなる。また昨今の老人ホーム(公的特別養護施設、民間介護付施設)で問題となっている、入居者の異常な行動・性格変化も、脳障害との関連を理解すると納得します。男性入居者が急に卑猥になって浴室を覗いたり、男性器を女性看護士に突きつけるなどの行動は、側頭葉扁桃体の異常によるもので、これは1930年代にアメリカの研究者が、アカゲサルの扁桃体を切り取って行動観察した実験で、異常な性欲を見せたり、腐敗物を平気で食べるような現象が顕著に見られたことで(クリューバービューシー症候群)説明出来ます。こういう入居者には言葉による説得では無理なので、向精神薬を投与して行動を抑えるしかないそうです。

●2019年5月【私の履歴書(中村吉右衛門)】

 日本経済新聞に連載される「私の履歴書」に、歌舞伎役者二代目中村吉右衛門(74)がその一生を綴っており、興味深く毎日読みました。吉右衛門は歌舞伎もさることながら、TVの「鬼平犯科帳シリーズ」主人公長谷川平蔵役がピタリと決まっているのでファンなのですが、数奇な生まれ育ち、身の回りを見てくれた優しい婆やの話、4歳で初舞台を踏んだ時からスパルタ教育を受けた養母の話、そして何より実父と養父と二人の飛び抜けた歌舞伎俳優から厳しく指導されたくだりを読むと、梨園の世界とはこういうものか、と改めて感じ入りました。

 吉右衛門の実父は高麗屋の八代目松本幸四郎。そこに嫁いだ母正子は播磨屋の初代中村吉右衛門の娘。初代中村吉右衛門には跡取りの息子がいなかったため正子は「必ず男の子を二人産み、一人を高麗屋の跡取りに、もう一人を播磨屋の跡取りにします」と宣言し、その通り長男市川染五郎(後に九代目松本幸四郎)を産んだ二年後に、次男である筆者を産み、初代吉右衛門の養子にしました。つまり孫が祖父の名跡を継いだわけです。

 初代と共演出来たのは10歳迄のわずか6年間だけでしたが、「佐倉義民伝」で初代が演じた佐倉宗吾が将軍に命がけで直訴する場面では、その神がかった演技に興奮した観客から、お賽銭が投げ込まれたことに強い印象を持ったそうです。その実父の口癖は「一生修業、毎日初日」で、「同じ役をひと月演じても、毎日初日のような気持ちで演じなさい。そのためには一生修業しなさい。役者にとっては毎日のことであっても、お客様にとってはその日限りなのです」という自戒の言葉だそうです。 10歳で喪主となり二代目吉右衛門を継ぐと、今まで楽屋で「坊ちゃん、若旦那」とちやほやしてくれた周りの人達が急に冷ややかな態度になり、「馬鹿旦那」と陰口を叩かれるような苦労をし、11歳の時に女形で「あーい、あーい」と高い調子で台詞を述べていたら突然声変わりし、「がーい、がーい」とひどいダミ声になってしまい、客席から笑われてしまった話なども書かれていました。

 実父の八代目松本幸四郎は歌舞伎役者の枠を出て、あらゆる芝居にチャレンジしたので吉右衛門も文学座、人間浄瑠璃などと共演する機会に恵まれました。盲目の目を大きく開いて見せる場面が見せどころの場面で、実父は医者から「目が潰れるかもしれないから止めなさい」と言われたのに聞かず、わざわざ赤いハードコンタクトレンズを入れて瞳全体を赤く見せる工夫をしていたそうで、読んでいて役者魂というのは凄いものだなと空恐ろしくなりました。


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